2026年9月2日、三菱が新型フラッグシップSUV「パジェロ」を初公開しました。これは全世界で初めてのワールドプレミアで、都内の発表会場には海外メディアやディストリビューターも多数参加していました。

◆パジェロを筆頭にしたシリーズが再編!

今回の発表では、車両価格やグレード展開、スペックの詳細などは伏せられていたものの、デザインや主要装備などをすべて公開。10月1日に予約注文が開始することも発表されました。持てる技術がすべて注ぎ込まれた三菱の最新フラッグシップは、生産拠点のタイを皮切りに、オーストラリア、日本と今年度中に随時展開していく予定。来年以降は100カ国を超える国と地域で販売されます。同時に、コンパクト、スモールのパジェロシリーズを展開することも発表。かつてのパジェロイオやパジェロミニのような、パジェロを頂点としたシリーズ化が近い将来実現されるようです。

2019年に国内販売が終了して以来、今か今かと登場を待ち侘びていた人も多いでしょう。2026年現在も、国内で3万台以上がまだ保有されている大人気クロスカントリーSUV。5代目となる新型は、今までのパジェロの特徴に加え、ブランドのフラッグシップに相応しい上質さが加わりました。

◆上質な乗り心地は増岡浩が太鼓判
「一番注目してほしいところは、乗り心地のよさですかね。悪路走破性ももちろん自信ありますけど、新型ならではのよさは乗り心地に表れていると思います」

こう語ってくれたのは、あのパリ・ダカール・ラリーでパジェロに乗り日本人唯一の2連覇を達成したレジェンド、そして現在は三菱ラリーアートのワークスチームを率いてAXCR(アジア・クロスカントリー・ラリー)を戦う、総監督「増岡浩」氏。増岡氏はラリーの最前線を退いたあとも、三菱車の開発に携わり、特に4WDシステムや足周り関連、制御関係など走行関連を中心に、多岐にわたって開発を担当してきました。

「じつは、直接開発の現場に口を出すことは今回そこまでしなかったんです。その代わり、開発陣がパジェロに対する思いを、余すことなく新型に注いでくれました。ボクが考えていた理想形、まさに会心の出来だと思っています。パジェロ伝統の走破性は損なうことなく、極上の乗り心地を実現しています。三菱のフラッグシップらしい、快適で上質な乗り心地といえますよ!」

本当に嬉しそうに話してくれた増岡氏ですが、じつは開発陣の誰よりもパジェロに触れてきているスペシャリストでもあります。初代パジェロがデビューした1982年から、ドライバーとしてステアリングを握ってきた増岡氏だからこそ、こだわった点も多かったでしょう。そんな増岡氏が太鼓判を押す新型パジェロ。増岡氏の考える理想的な乗り心地と走行性能が、備わっているようです。

◆ラリー実戦での経験をフィードバック
パワーユニットの2.4Lクリーンディーゼルターボについても、増岡氏は教えてくれました。「AXCRで戦ったトライトンに、じつはシングルターボを搭載していたんです。本来ならトライトン自体はツインターボですが、あえてシングルを使った理由。それはこのパジェロのエンジンとして採用が決まっていたからなんですよ。パジェロのエンジンは、ラリーの実戦で鍛え上げられ、仕上げられたのです」。

トライトンに搭載される2.4Lをベースにしながら、トライトン比+10Nmの480Nmという強大なトルクを手に入れたパジェロ専用のパワーユニット。新開発の8速ATと組み合わせられ、伝統の4WDシステム「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」によって駆動力が伝えられます。そして三菱が世界に誇る電子制御の4輪統合制御システム「S-AWC(スーパー・オールホイールコントロール)」を、パジェロとしては初搭載。増岡氏曰く、「この大きなボディから想像できないような、オンロードでの走行性能」を実現しているようです。

「悪路走破性はもちろんのこと、オンロード性能も磨き上げてきたのが、このパジェロの特徴です。とにかくグリップ性能が高くて、ハンドリングがいいんですよ。」ラリードライバーの増岡氏は、本来であればキビキビした動きが好み。そのことは過去に伺ったときにも話していたのですが、その増岡氏を納得させるだけの性能をS-AWCが実現してしまったということなのでしょう。

◆上質感は内外装のいたる箇所に

ここからはスペック的な部分にも触れましょう。ボディサイズは、全長4920×全幅1925×全高1910、ホイールベース2870(単位はmm)の、堂々とした体躯。トライトンでも採用されラリーで鍛え上げられた、高剛性のラダーフレーム構造のボディを採用します。

フロントオーバーハングを可能な限り短くした、FRレイアウトらしいプロポーションは歴代パジェロの伝統。この5代目にも踏襲されたフォルムは、悪路走破性を向上させるためにも重要です。フロントのアプローチアングルは30.4度、ランプブレークオーバーアングルは22.6度。スペアタイヤをフロア下に収めているにも関わらず、リアのデパーチャーアングルは25.8度をそれぞれ確保。最低地上高は230mmに設定されました。

サスペンションには、現代のクロカンモデルで主流となりつつあるフロント独立&リアリジッド方式を採用。前ダブルウィッシュボーン/後5リンク式リジッド(新開発)は、卓越した悪路走破性と快適なオンロード性能を高次元で両立するだけでなく、「悪路での快適性」をも意識して作り込んでいます。走行パターンにはスーパーセレクト4WD-Ⅱのトランスファーに加え、7つのドライブモードを設定。ノーマル/エコ/グラベル/スノー/マッド/サンド/ロックの7つのシーンそれぞれで、自信を持って運転できる楽しさを提供してくれます。


デザイン面でも、フラッグシップらしい先進性と上質感が表現されています。エクステリアでは、水平基調のスクエアなフォルムに、前後フェンダーをはじめとする各所のボリューム感のある面構成が組み合わせられ、力強さとラギッド感を表現。前後に採用された特徴的なT字型のライト類が、先進さを主張します。


インテリアには、初代からの伝統でもある水平基調のコックピット周りを継続して採用。各部の上質感もさることながら、物理スイッチをしっかりと残す使いやすさを重視したデザインが好印象です。オーディオには、アウトランダーに続いてヤマハと共同開発したプレミアムシステム「ダイナミック サウンド ヤマハ アルティメット」を搭載。12スピーカーによる高音質な音楽を堪能できます。

なお、車両価格は未発表ですが、会場でなんとなく聞いた感じではアウトランダーよりも高額になることは確実のようです。となると、グレード展開も考え700〜900万円くらいの価格帯になるのではと予想されます。
◆ダカールラリーへの復活は?

さて、パジェロといえばダカールラリーでの栄光を思い出す人も多いでしょうが、今後のラリー活動はどうなるかにも触れておきましょう。すでに来年から3年間のAXCR参戦は発表されていますが、ダカールのレジェンド増岡氏は、個人的にもダカールには復活したいと考えているようです。

「もちろんダカール参戦も考えているのですが、今のままではダメなんですよ。エンジンパワーが足りないから、直線で置いてかれちゃう。大きなエンジンというよりも、ウチとしてはやっぱり電動でチャレンジしてみたいですよね」。これはあくまでも、増岡氏個人の意見であり、三菱としてのアナウンスではありません。でも、なんとも夢のある話ではありませんか!

「いつかは復活したいですよね。本音を言ってしまえば、(ランクルやディフェンダーの出ている)市販車クラスではなく、トップのプロトタイプクラスでいきたいところですけどね。なかなか現実は難しいですよ(笑)」。世界中のファンが待ち侘びているのは、やはりダカールの舞台でのパジェロの勇姿。そして三菱復活の勝利でしょう。そのためには、パジェロが1台でも多く売れてくれないと……。モータースポーツ参戦には、とにかく潤沢な資金が必要なのです。

「ダカールの話は、復活するにしても相当先の話になるはずですので。まずは、この市販型のパジェロが復活したことに満足しています」。筆者もラリーファンであり、パジェロを幼い頃から見てきたファンの1人。「パジェロの復活と聞いて、泣きそうになりました」と正直に伝えたら、増岡氏は応えてくれました。「ボクも同じ思いですよ。パジェロは、特別な存在なんです。こうして開発に携われたことも嬉しいですね!」。そんな増岡氏の目にうっすらと浮かんだ涙が、この発表会で一番印象に残ったことは言うまでもありません。

<文&写真=青山朋弘>










