
「私もルークスからルークスに乗り換えたのですが、今回は白(ご当地)ナンバーにフレームを付けてしまいました。開発しているときから、軽自動車の感覚があまりしなくて。自画自賛になりますが、オシャレだし、走りもしっかりしてるので登録車に負けないクオリティかと思います」。こう話してくれたのは、新型ルークスの開発陣のうちの1人。このひと言が、今回の新型ルークスを端的に表している言葉だと思いました。
試乗会に行くとメーカー側開発者の方々から貴重な話が聞けるのですが、これはその話の一部。至る所に、登録車顔負けのクオリティが存在していると開発陣が主張する通り、試乗会で乗ってみてルークスの高品質ぶりをさらに知ることができました。
◆もはや快適ツアラー!? 特筆すべきは「走行時の快適性」
まずは試乗しての率直な感想ですが、静粛性、乗り心地ともに申し分なく、軽自動車のスーパーハイトワゴンではトップクラスの快適性でした。

走りのクオリティがかなり高いことは、兄弟車「三菱 デリカミニ」の試乗記でも触れたとおり。プラットフォームが先代からのキャリーオーバーということもあり、さすがの熟成度を見せてくれます。今回のルークス試乗会のステージは、横浜近郊の一般道と高速道路を使用しました。

まず特筆すべきは、走行中普通のボリュームで前後席が会話できる静かさが確保されていること。今回も試乗は同業のライターさんと2名で行ったため、試乗中は基本会話をしている状態でした。にもかかわらず、試乗ステージが変わり路面の変化があっても、終始声を張り上げることはありませんでした。高速道路でも走りましたが、風切り音もうまく抑えられており、スピードを上げてもその静粛性は保たれたまま。登録車顔負けの静粛性といってもいいでしょう。

そして、乗り心地も快適そのものでした。「デリカミニと同じく、サスペンションのダンパーにはKYB製のProsmoothを使用していますが、ルークスには独自の装備として“高応答バルブ”が入っています」。この高応答バルブは、兄弟車のデリカミニには搭載されなかったパーツのひとつ。より細かい路面の凹凸をしなやかに吸収し、これが快適な乗り心地を提供する理由となっていることは、すぐにわかりました。ラフロードでの走行を想定しているデリカミニと違い、ルークスはよりオンロードに特化したセッティングだといえます。

不快に頭を揺さぶられることも、試乗中ほぼ皆無。それどころか、一般道でも高速道路でも快適な乗り心地を提供してくれました。これはリアシートに乗っても同様で、同乗者にも優しい造りが好印象でした。

従来モデルは、パドルシフトを駆使してワインディングをグイグイ攻められるようなスポーティさを持っていましたが、世代交代によりキャラクターは快適ツアラーに変わっています。ACC(アダプティブクルーズコントロール)のプロパイロットも備えれば、高速道路での移動がこの上なく快適になるでしょう。
◆同乗者がクルマ酔いしにくい工夫も
前回の紹介記事でも触れましたが、いざ乗ってみるとやはりインテリアのハイクオリティぶりには驚きます。乗り込んですぐに目の前に飛び込む、一体型のワイドスクリーン。そのスクリーンを中心にした、シンプルかつ上質に仕立て上げられたインパネ周り。実際に電源が入り動き出すと、輸入車にでも乗っているかのように錯覚します。

試乗では、シートの座り心地も乗り心地のよさに寄与していることが確認できました。一見サポート性能とは関係のなさそうなベンチシートですが、ルークスのシートはしっかり身体を沈み込ませるタイプ。適度なホールド感が確保されているため、走行時の不必要な揺れがうまく抑えられています。クッション性も申し分なし。他社のライバル車とは、ひと味違った座り心地が体感できるでしょう。

ルークスは、乗員の“クルマ酔い”にもかなり気を遣って作られていることが特徴です。「酔いの原因として私たちが考えているのは『揺れと匂い』でした。先代では後席頭上のサーキュレーター部に装着していた、プラズマクラスター発生装置を前席ダッシュボードのレジスター内へ移設。プラズマクラスターの脱臭能力を、もっと車内全体へと広げるためにです」。

しかもこのシャープ製イオンの発生装置には、家庭用空気清浄機などでも使用される“高濃度25000”タイプを使用。脱臭のほかに、静電気の抑制にも効果があるプラズマクラスターですが、濃度が高ければそれらの効果も現れやすくなるでしょう。快適性への追求は、車内空気にまで及んでいることに驚いた点でした。
◆7人がかりのマスキング作業!?
と、ここまでは、快適性や質感の高さを中心にお伝えしてきましたルークスの魅力ですが、ここからは開発者の方々から聞き驚いた話をもう少し紹介しましょう。

まずは、その複雑な塗り分け線に目が釘付けになった「プレミアム2トーン」のボディカラー。これは、兄弟車のデリカミニにはなく、ルークスだけに設定される特別塗装で、ハイウェイスターグレードにオプション設定されています。その塗装工程はやはり複雑だそうで、「手間はものすごくかかってますね。7人がかりでマスキングして、塗装しての工程をプラスしますので、単純に時間もかかります」と話してくれました。
マスキングに7人とは、さすがに初めて聞きました。もう、軽自動車どころか、一般的な大衆車の領域を超えてる塗装色といえます。この手作業ペイントとプレミアムインテリアがセットで16万円のオプションなら、むしろ安価と感じる人も多いでしょう。

個性的といえば、内外装の随所に見られる“かどまる四角”のモチーフも気になるポイント。「先代のルークスまでは、正直個性が薄かった気がしていました。その点で、かつてのキューブにも通ずるキュービックデザインは非常にいいアクセントになっていると思います。実際お客さまからの評判もよく、個性と車格をうまく引き上げる効果があったのかなと感じています」。

名車「キューブ」のようなモチーフやカラーは、個性を演出するだけではありません。デザインは、素材選び、緻密な作りとともにクルマの質感をグッと引き上げる大切な要素のひとつ。優れたデザイン面が、ルークスの魅力をさらに引き上げていることは一目瞭然です。今までの軽自動車とはひと味もふた味も違うなと感じられる部分だといえるでしょう。

詳細チェックの記事で触れた、“驚くべき質感のステアリングホイール”についても、詳しく伺うことができました。

「あの表皮素材は『テーラーフィット』という日産が独自開発した新素材です。手のフィット感を追求する過程でわかったのですが、人間の手の皺や指紋の形に近ければ近いほどフィット感が高くなるのです。テーラーフィットはそんな解析からうまれた素材です」。このステアリングの質感は、本当に驚く人が多いとの話も伺えました。オーナー心を満たす点としては大きな存在になるでしょう。
◆あの王者もウカウカしていられない……
このように、新型ルークスには登録車のコンパクトカーとほぼ遜色ない、上位のグレードならばそれ以上のクオリティが、備わっていました。冒頭で話を紹介した開発者の方は、とても軽自動車には見えないと思い白主体のナンバープレートを今回初めて付けたとのことでした。この考えは、実車を見て、そして試乗してみるとそのカンストっぷりがよくわかります。

現代版キューブと称されるのは、クオリティの高さに加え、自分の部屋のようにくつろげる空間に仕上がっているという意味でも捉えて間違いないでしょう。もはや軽自動車とは思えないクルマに仕上がっている新型ルークス。軽自動車の絶対王者「ホンダ N-BOX」の牙城を崩す日も、そう遠くはないのかもしれません。
<文&写真=青山朋弘>
■日産 ルークス ハイウェイスターGターボ(FF・CVT)

主要諸元
【寸法・重量】
全長:3395mm
全幅:1475mm
全高:1785mm
ホイールベース:2495mm
トレッド:前1300/後1290mm
最低地上高:150mm
車両重量:980kg
乗車定員:4人
【エンジン・性能】
型式:BR06
種類:直3DOHCターボ
ボア×ストローク:62.7×71.2mm
圧縮比:9.2
総排気量:659cc
最高出力:47kW(64ps)/5600rpm
最大トルク:100Nm(10.2kgm)/2400~4000rpm
使用燃料・タンク容量:レギュラー・27ℓ
WLTCモード燃費:19.3km/ℓ
最小回転半径:4.8m
【諸装置】
サスペンション:前ストラット/後トーションビーム
ブレーキ:前Vディスク/後L&T
タイヤ:前後165/55R15
【価格】
215万9300円(消費税率10%込み)





