2023年11月、創業55周年を迎えたミツオカから突如1台のコンセプトカーが発表されました。1970年代に流行した、マッスルカー風のデザインで仕上げられたハッチバックの名は「M55(エムダブルファイブ)コンセプト」。その名の通り、光岡自動車の創業55周年を記念して作製されたコンセプトカーです。

■ベース車がわからないほど秀逸なデザイン

ミツオカは長きにわたってブリティッシュクラシック風なオリジナルカーを販売してきましたが、2018年の創業50周年モデル「ロックスター」発表を皮切りに、アメリカンスタイルのクルマもラインナップするようになりました。初のSUVモデルでもあるバディは、往年のアメリカ車のようなデザインが支持され1200台以上が生産されています。

今回発表されたM55コンセプトも、どちらかというとアメリカンなデザイン。往年のマッスルカーのような風貌が特徴的です。しかし、ミツオカの関係者に話をうかがうと、「どちらかというとマッスルカーよりも70年代の国産車を意識している」とのこと。ケンメリスカイラインやダルマセリカなど、特徴的で魅力的だった往年の国産車をイメージしているようです。

ベースとなっているクルマは、現行型の11代目ホンダ シビック。伸びやかなフォルムのCセグハッチバックを、まったくわからないくらいに作り替えてしまっています。そのデザイン精度はさすがミツオカと言わざるを得ないほどのクオリティ。成型技術を始めとしたミツオカの技術力が存分に生かされています。ほかのミツオカ車と同様、フロント・リアのデザインが主に変更されている点ですが、それだけでまったくベース車がわからないほどの仕上がりです。

内装もM55コンセプトならではの仕様となっています。70年代のスポーティなクルマには必須だったパンチング加工が施されたレザーシートは、外観デザインにマッチしたデザイン。カラーもオリジナル仕様となっていて、M55コンセプトの雰囲気と調和しています。ダッシュボードなどコックピット周りにはあまりカスタムが見られませんが、シビックのデザインが元々クラシカルなので違和感がまったく感じられませんでした。

■今は未定でも多くの市販化希望の声が!

名前にコンセプトと付いていることからもわかるとおり、このクルマはあくまでも参考出品のプロトタイプ。今のところ市販化の予定はまったくないとのことです。というのも、ベース車のシビック自体が受注を多数抱えていて生産が遅れている状況のため、ベース車調達の見通しが立たないからというのが大きな理由だそう。

しかし、実車が展示されていた麻布ショールームの店内には、市販化を希望するファンの声が多く残されていました。以下は、実際にショールーム内に飾られていたファンのコメントです。
「まだ大学生ですが、ずっとミツオカさんが好きで、ミツオカさんのクルマを買うために今から貯金しています。M55もめちゃくちゃカッコいいです。サイドは昔のセリカLBを思い出すカッコよさがあります。フロントはケンメリスカイラインを思い出します。3ドアでの販売を期待したい!」
「見た目が好みなので、市販されたら絶対に買います。ファミリーカーで使える4ドアがポイント高いです」
「ひと目惚れするカッコよさ。ぜひ商品化をご検討ください。絶対に買いたい」
「カッコいい! 難しいかもしれないけど、フェンダーミラーだったらもっと好き。MTだし、将来絶対に所有したい。ぜひ市販化してください。お願いします」

「このハッチバックの形が懐かしいです! 18歳で免許を取って、親父のバイオレットを乗りまわして田舎道をかっ飛ばしていたころを思い出します。このボディラインがたまりません。人生最後のクルマはこれにしたいな~♪」
「これは欲しいと思った1台。世の中のデザインが、どうしても空力や燃費等のデータ主義のために偏りがちななか、こんルックスに目が止まってしまった。きっと同じ思いの人は多くいるはず」
「デザインが本当に堪らない。自分は大学生なので、仮に発売されてもすぐに買うことはできないものの、就職したら一番最初に頑張って買いたい。そう思えるようなとてもすばらしいクルマです」

「もうこれは生涯にわたり乗り続けるクルマにしたいと思う。久しぶりに欲しいと思うクルマです。ぜひ、タイプRでの販売をお願いします」
「まさに今欲しいクルマのナンバーワンです! 当年61歳。ハイブリッドも電動化も時代の流れだが、私には1.5リッターMTで十分。これを最後のクルマとして人生を終わりたい」
「カッコいい! とにかくカッコいい! 画像を見た瞬間、頭から離れない。2023年という時代にこのようなときめきデザインを見ることができるとは思うもしなかった。クルマってこうあって欲しいという私の願望を叶えてくれている。特にフロントのデザインには夢が詰まっている。私の未来を照らすのはこのM55のフロントライトにお願いしたいかもしれない」

ミツオカは、会社と同じ55年の人生を歩んだ同世代をメインターゲットに据えているとアナウンスしていますが、これらのコメントを見る限り30代前後の若い世代も多くいるようです。ファンの声は確実に届いていますので、あとは市販化の発表を待つだけでしょう。日本車が一番輝いていた時代を思い起こさせる、レトロ風ハッチバックのM55コンセプト。市販化の報せをいつまでも待ちたいと思わせるほど、魅力的なクルマです。
<文=青山朋弘 写真=ミツオカ/青山朋弘>