リセールの良いクルマとひと言でいっても、いろいろな種類があります。需要が供給数を上まわるというのは大前提にあるのですが、世の中には予想もできないような買取値がつくクルマも存在するのです。そんな世界をちょっとでも見てみたいと思うのが、クルマ好きのサガ。実際にどのくらいの残価率で取引されているかは気になる人も多いのではないでしょうか。
今回紹介する5台も、過去SellCaで実際に買取が行われた高額車両。その希少価値の高さや、慢性的な供給数不足から高価買取されたポルシェのクルマにスポットを当てました。このクルマたちがなぜ高価買取されたのか、実際に買取されるリアルをご覧ください。
これから紹介するデータは、愛車買取オークションSellCaでの出品データからポルシェ車に対象を絞り、特に高額売却された実績について調査したものです。
調査機関:自社調査
調査日:2018年06月20日~2023年07月28日
調査対象:弊社で取引されたクルマのデータ218件(ポルシェ車に絞って)
調査方法:自社保有データ分析 高額で落札されたものかつ新車価格を比較して残価率の高いものを5つ抽出(車種が同じもの、乗用車でないものは除く)
●ボクスター
最初に紹介するのは人気のロードスター、ボクスターです。
こちらの個体は
グレード:GTS
年式:2015年
走行距離:27,942km
というデータです。
ボクスター GTSの当時の新車価格は966万円(オプション等除く)から。SellCaで実際に落札された価格は、なんと715万円です。残価率は5年落ちで74%でした。
先代モデルにあたる3代目981型ボクスターは、生産終了から7年以上経っているとは思えないほど人気が高くなっています。というのも、現行の4代目982型718ボクスターが登場当初あまり人気がなかったことが大きな理由で、982型が登場直後に981型の中古車相場が高騰し、今では落ち着きは見せてはいるものの高値で安定しています。高騰の一番の原因はエンジン変更です。
982型が登場したとき、4気筒エンジン+ターボへとダウンサイジングしてしまった影響が大きいようで、現行型に買い替えたオーナーがわざわざ981型に買い直すという事例も多々あったそう。そのくらいボクサー6気筒NAエンジンのフィーリングがいいということでしょう。
この個体は981型のなかでも特にスポーツ性能が高いGTSということもあり、高額買取で成約しています。GTSは、上級グレードSの3.4Lをさらにパワーアップさせた高性能エンジンが搭載され、サスペンションには電子制御可変ダンパーのPASMが標準で備わります。スポーツ志向のより強いオーナーが求めるグレードでもあり、通常グレードよりも高価になりやすくなります。高い残価率も納得の内容といえるでしょう。
(成約時期:2020年3月)
●パナメーラ
次に紹介するのは、4ドアサルーンの旗艦車種パナメーラです。
こちらの個体は、
グレード:4
年式:2018年
走行距離:17,625km
というデータです。
パナメーラ4の新車価格は1212万円(オプション等除く)から。SellCaで実際に落札された価格は、なんと931万円です。残価率は3年落ちで76%でした。
スポーツカー顔負けの運動性能と、ラグジュアリーカーの快適性を兼ね備えたフラッグシップサルーンのパナメーラ。現行の2代目モデルは2016年に販売開始され、2023年現在の相場平均が1000万円超えとかなり高値をキープしている人気車でもあります。ターボやハイブリッドなどのグレードも上級には用意がありますが、この個体のグレードは4。3.0LのV6ターボに4WDを組み合わせた、スタンダードなグレードです。それでもここまで高額な成約となっているのは、やはり新車の納期遅延が影響を与えているようです。
パンデミックが原因による新車の納期遅延は、世界中どのメーカーも同じ状況。ポルシェも例には漏れません。新車の納期が1年以上もかかるようなら、即納できる程度のいい中古車を探そうとするのは当然の心理です。パナメーラもそんなに多くの数が流通しているクルマではありませんので、当然この影響を受けやすくなっています。この個体は、高年式、低走行、白のボディカラーという好条件に加え、ワンオーナー車、そしてオプションのブラックホイール、サラウンドシステム、後席サンルーフを装着していることもプラスにつながっているでしょう。
(成約時期:2021年12月)
●カイエン
次に紹介するのは、大型SUVのカイエンです。
こちらの個体は、
グレード:3.0
年式:2020年
走行距離:15,052km
というデータです。
カイエンの新車価格は1030万円(オプション等除く)から。SellCaで実際に落札された価格は、なんと994万円です。残価率は2年落ちで96%でした。
ほぼ新車価格そのままで成約している、カイエンの例です。スポーツカーブランドが作ったSUVのパイオニアでもあり、初めて商業的に成功を収めたSUVでもあるカイエンは、高級SUVの代名詞的な存在として非常に人気の高いモデルです。3代目となる現行型は、2017年にデビューしました。
2023年現在の中古車相場平均が1000万円近い金額となっていることからも分かるように、3代目カイエンの相場は高値で安定しています。一番影響を与えているのは、新車の納期遅れでしょう。中古車の流通量が200台に満たないような少ないクルマです。即納を求める人たちが増えれば増えるほど、価格が上がっていくのは仕方がないことです。この個体は、Sやターボなどの上級グレードではなく、3.0Lエンジンを搭載するスタンダードグレード。もちろん高年式、低走行、白のボディカラー、希少なレッド内装などの好条件が揃っている部分もありますが、納期問題が重なりさらに高額買取となったとみて間違いないでしょう。
(成約時期:2022年8月)
●718 ボクスター
次に紹介するのは、最新ロードスターの718ボクスターです。
こちらの個体は、
グレード:GTS 4.0
年式:2020年
走行距離:11,273km
というデータです。
718 ボクスターGTS 4.0の当時の新車での価格は1140万円(オプション等除く)から。SellCaで実際に落札された価格は、なんと1300万円です。残価率は2年落ちで114%でした。
好条件が揃って高額買取が成約した好例といえます。718ボクスターのなかでも個体数の少ないMTモデルは高値で取引されますが、この個体はそれに加え「GTS 4.0」というグレードが高額の一番大きな理由となっています。モデルチェンジ時にファンの中では賛否両論だった4気筒ターボ化でしたが、2020年にGTSが待望の6気筒モデルとして復活しました。それが、このGTS 4.0です。
もはやレーシングスペックともいうべき最上級グレードのスパイダーにも6気筒エンジンは搭載されていましたが、GTS 4.0はスパイダーよりもマイルドな特性で一般道でも扱いやすくしたグレード。エンジンもスパイダーと共通ではありますが、馬力はやや控えめ(それでも400ps!)に設定されています。価格もスパイダーよりは安価で提供されました。
とはいいながらも、ボクスターのラインナップではかなりスポーティで高価なグレードであり、中古車市場での人気は非常に高くなっています。この個体に関しては、GTS 4.0、MTのほかに、低走行、白のボディカラー、車検付き、そして新車の納車遅れという好条件がすべて重なりました。新車価格超えの買取額にも納得です。
(成約時期:2022年12月)
●911
最後に紹介するのは、ポルシェの代名詞とも呼べるスポーツカー911です。
こちらの個体は、
グレード:GT3 RS
年式:2016年
走行距離:10,239km
というデータです。
911 GT3 RSの当時の新車価格は1912万円(オプション等除く)から。SellCaで実際に落札された価格は、なんと2207万円です。残価率は7年落ちで115%でした。
「役モノ」の強さをあらためて見せつけられた成約例といえます。911のなかでも特別とされているグレードは役モノともいわれ、ターボ、GT2、そして今回のGT3などが該当します。この個体は、GT3のなかでも特にレーシング志向の強いRSであり、中古車市場での人気もかなり高くなっているモデル。センターロック式のホイールが、通常グレードとの違いを物語っています。ほとんどのグレードがターボ化してしまった911の中で珍しいNAエンジン搭載車ということも、人気の要因となっています。
先代モデルの991型とはいえ、GT3 RSともなるとその速さは一級品。今でも世界トップクラスの動力性能を持っていることは間違いありません。中古車市場での991型は全体的に人気が高く、相場も高値安定です。その991型の役モノですから、高額買取となっても当然といえるでしょう。
GT3は販売店にとっても非常に売りやすいクルマ。911の中でも特に人気があるので引く手数多です。買取が高額になりやすい原因は、このあたりも影響しています。RSはさらに個体数が少ないので、その傾向が強くなりがち。さまざまな好条件が重なったほか、今回は成約時期がまだまだ新車の納車遅れが続いている頃ということもあり、高額査定につながっています。
(成約時期:2023年5月)
<文=青山朋弘 写真=ポルシェ/SellCa>