
◆欧州プレミアムに並ぶレベルの動的質感
「まるでアウディ」。新しいプレリュードの走り味をひと言で表すなら、この表現がピッタリかもしれないです。どこをとっても質感の高さを感じさせるドライブフィール。これは最新のアウディに乗った人であれば共感できるかもしれませんが、とにかくすべての動作が滑らかなのです。

例えばステアリングを切った瞬間に感じられる、まったくザラザラ感のないスムーズな操作感。アクセルやブレーキの操作に対しても、運転しているという感覚がダイレクトに伝わるかのようなリニア感。少し前に乗ったアウディのRS3と、非常に似た感覚で正直驚きました。

質感の高さを感じる場面は、操作系だけではありません。
例えば静粛性。いざ乗り込み、大きくて重ためなドアを閉めた瞬間、聴力がおかしくなったかと錯覚するほどの静けさ。「いいクルマに乗ってる感」は、エンジンをかける前でも十分に味わえます。スタートスイッチを押し、いざ走り始めても静粛性は保たれたまま。「なんて静かなスポーツカーなんだ!」。聞こえてくるのは、タイヤから発せられるロードノイズだけ。電動車に乗っているのだと認識させられる瞬間でもあります。30km/hを超えたあたりからようやく始動するエンジン音も、いたってジェントル。まったく存在を主張することはありません。


乗り心地の面でも高い質感は感じられました。とにかくどの速度域でもフラット。頭が激しく揺さぶられる場面は皆無ですし、40扁平のタイヤを履いているとは思えないほど衝撃がうまく吸収されています。ドライブモードは電子制御サスペンションの硬さも変えるため、走行シーンに応じて変えることがオススメです。街中での低中速域では、「コンフォート」。高速道路では「GT」。サーキットなどで走るのなら「スポーツ」と、明確にセッティングが分けられていて、乗り心地の違いはすぐにわかるほどです。

昨今のホンダ車はどれに乗っても「いいクルマ」と感じる場面が多かったですが、このプレリュードはその感覚をさらに1段階上げてくれました。走りの質感は、すでに欧州のプレミアムクラスと同レベルといっても過言ではありません。だからこそ、もう少し高くしても売れたのでは? と思わせてしまうのです。
◆とにかくストレスなく快適に
ステージを高速道路に移せば、プレリュードの実力をこれでもかと思い知ることができるでしょう。件のドライブモードをGTに切り替えれば、ビタっと安定した走りを披露。直進安定性は申し分なしですし、フラットライド感はさらに引き立っています。

先述の、操作系が滑らかで抵抗感がない、いたってナチュラルな操作感。厚みを十分に保ちながらも、適度なホールド感を持たせたシート。フロントシートは、運転席と助手席とでサポート形状を変えているという点もこだわりを感じるポイントです。もちろん、風切り音が抑えられた優れた静粛性も大きく寄与しています。とにかくストレスなく快適に。GTカーの要素が、新型プレリュードにはしっかりと備わっています。

久々にホンダから本格的なGTカーが出てきたと、嬉しくなってしまいました。GTカーは一般的に、長距離を乗っても疲れにくいという特徴がありますが、プレリュードはこの点に関してまったく不満点が見当たりません。

◆ホンダのGTは燃費性能も桁違い

そして、そこらのGTカーと違うぞと言わんばかりのホンダならではの性能が、燃費です。一般的にプレリュードのようなストロングハイブリッドは、街中などの低中速域での燃費向上を主体にしているため、高速道路では燃費がさほど伸びないというのが定説でした。しかし、プレリュードは違います。高速道路でも、20km/Lオーバーを余裕で叩き出す実力も備えているのです。


高速道路での燃費は、いつものショートツーリングで実測しました。東名川崎インターから新東名「新秦野インター」までの往復約100kmで、周りの大型車に合わせた90km/hで走行。その結果、ゆるやかな上り坂を含んだ往路で「19.8km/L」、逆の復路では「22.8km/L」、総合で「21.1km/L」をマークしています。

正直、ここまで高速燃費のいいGTクーペは今まで見たことありません。一般的にGTカーは、排気量の大きなエンジンを搭載しているケースが多いため、高速燃費はせいぜい10~15km/Lくらい(ガソリン車)という場合がほとんど。プレリュードは、GTカーの燃費常識を一気に上書きしてしまったのです。これなら遠距離のツーリングが好きな人でも、思う存分にドライブを楽しむことができるでしょう。

◆楽しさを倍増させる「ホンダ S+シフト」
プレリュードの魅力が発揮されるのは、高速道路だけにとどまりません。ひとたびワインディングに持ち込めば、ドライバーの意のままに走る軽快さも見せてくれます。

今回プレリュードに初採用された新トランスミッション「ホンダ S+シフト」は、今まで変速という概念がほぼ存在しなかったハイブリッドパワートレインに、新たな魅力を生み出してくれました。この魅力を一度味わってしまうと、とにかくS+スイッチを押して変速操作がしたくなります。そのくらい運転に楽しさをもたらしてくれる新装備といえます。


S+シフトだけではありません。FFだということを忘れさせるほどのハンドリングを見せる「アジャイルハンドリングアシスト」と「デュアルアクシスストラットサスペンション」の新技術。これらを支えるシビックタイプR譲りの高剛性シャシーも相まって、ワインディングではFR車のようにアクセルで曲がる楽しさを持ち合わせています。


◆国産車では珍しい本格GT

惜しむらくは、600万円クラスという高価格帯のクルマにも関わらず、電動パワーシートが設定されていないことでしょうか。今後はオプションで設定されることも考えられますが、シビックにも設定されている電動機構をなぜ付けられなかったのかは、少々疑問が残りました。

ロングツーリングもワインディングも、全方向で楽しめるクルマに仕上がっている、新型プレリュード。国産車でもこんなに質の高いレベルに仕上がっているクルマは珍しい存在ですが、一度乗ればすぐに魅了されてしまうかもしれません。今のところ販売も好調で、すでに長い行列ができているようです。ホンダが送り出す、燃費のいい新世代の本格的なGTカー。同類のクルマを考えている人は、ぜひ一度乗ってみることをオススメします。600万円のプライスタグが安く感じるかもしれませんよ?
<文&写真=青山朋弘>
■ホンダ プレリュード(FF・ー)

主要諸元
【寸法・重量】
全長:4520㎜
全幅:1880㎜
全高:1355㎜
ホイールベース:2605㎜
トレッド:前1625/後1615㎜
最低地上高:135㎜
車両重量:1460㎏
乗車定員:4人
【エンジン・モーター・性能】
エンジン型式:LFC
種類:直4DOHC
総排気量:1993cc
ボア×ストローク:81.0×96.7㎜
圧縮比:13.9
最高出力:104kW(141ps)/6000rpm
最大トルク:182Nm(18.6㎏m)/4500rpm
使用燃料・タンク容量:レギュラー・40ℓ
モーター型式:H4
種類:交流同期電動機
最高出力:135kW(184ps)/5000~6000rpm
最大トルク:315Nm(32.1㎏m)/0~2000rpm
駆動用バッテリー種類:リチウムイオン
WLTCモード燃費:23.6㎞/ℓ
最小回転半径:5.7m
【諸装置】
サスペンション:前ストラット/後マルチリンク
ブレーキ:前Vディスク/後L&T
タイヤ:前後235/40R19
【価格】
617万9800円(消費税率10%込み)







