人気のコンパクトカー、スズキ スイフトがモデルチェンジし2023年12月に発売されました。いざ報道向け試乗会に参加し乗ってみたら、「この価格でこんなにいいの?」と驚きの連続! コストパフォーマンス最高な新型スイフトの試乗インプレッションをお送りします。
■燃費性能も向上させたエアロボディ
日本では軽自動車のイメージが強いスズキですが、グローバルで見たときに販売台数が一番多いクルマは、当然軽自動車ではありません。その答えは、今回試乗したスイフト。全世界で累計約900万台も販売されています。世界シェアで見れば、年間で20万台以上も売れているインドでの販売台数が半分以上を占めますが、当然日本でも欧州でも売れている、スズキの世界戦略車。それゆえに、失敗は許されないという一面もあります。
23年の10月に開催された東京モーターショー改め、ジャパンモビリティショーではスイフトのコンセプトモデルが展示されていましたが、この5代目はほぼその形そのままで登場しています。
先代モデルでは、検討していた顧客から「スポーティすぎる」という意見も見られたことから、幾分マイルドな方向へシフトしたエクステリアデザイン。ボディをサイドから見ると、後方に向かってキックアップしていたウエストラインは、水平基調へと変更され、特徴的だったピラー内蔵リアドアノブも通常のドア上部へと位置が変わっています。3サイズはほぼ変更なく、全体的なフォルムはスイフトらしさを残していますが、5代目ならではのこだわりは細部のデザインにも見て取れます。
外装には、高い燃費性能を実現するためのエアロダイナミクス性能も考慮されました。コンパクトカークラスではトップレベルの空力性能を実現するために、バックドアのサイドスポイラー採用や、フロントバンパー、ホイール形状の最適化までも行われ、空気抵抗の軽減に役立っています。
■燃費性能のために3気筒化
そして燃費性能の向上に一役買っているという点では、新開発の高効率エンジンも忘れてはいけません。5代目スイフトの一番大きなトピックともいえるエンジンの3気筒化。エンジニアの話によれば、これは燃費性能の向上が1番の理由だそうです。
CVTにも軽量化した新型を採用し、マイルドハイブリッドを組み合わせた新パワートレインでのWLTCモード燃費は22.7~24.5km/Lをマーク。今回からはMT車(マイルドハイブリッド車としては国産初)も設定され、こちらは同25.4km/Lとなっています。これらの燃費値は、同じスズキでストロングハイブリッドを積むソリオよりも10%以上向上していることからも、いかに高効率化が図られていることがわかります。
実際に乗ってみたところ、この3気筒化のデメリットはまったく感じられず、振動はうまく抑えられ静粛性も高く仕上がっています。動力性能にも不満はなく、スムーズな走りを披露してくれました。最初に乗り込んで動き出すとき、そっとアクセルを踏むような微操作でもスイフトはスルスル前に進んでくれます。
このドライバビリティのよさは「運転がしやすい」と感じる人も多いかもしれません。そのくらい意のままに素直な動きを見せてくれます。そして、アイドリングストップからのエンジン再始動時にもしつけのよさが感じられます。それはもはや気にしていないとわからないくらいのレベル。「軽とは違うのだよ、軽とは」そうスイフトがアピールしているかのようでした。
■ブレーキタッチは感動レベル
ドライバビリティという点では、まだ特筆すべき点があります。アクセルと同じく意のままに操れるステアリングもその一つです。狙ったラインを確実にトレースしてくれる素直なステアフィールは、例えばインターチェンジのような長く続くコーナーでより実感できるでしょう。
そして一番驚いたのがブレーキタッチです。踏んだ分しか効かない、カックンではないブレーキは速度調整がしやすく、信号待ちで止まるだけでも感動します。このブレーキのフィーリングは、開発陣でもかなり討論になったようで、開発主査側とブレーキエンジニア側で意見が別れたそうです。エンジニア側からすれば、安全重視で小さな踏力でもすぐに制動力を立ち上げたいところ。しかし開発主査側はドライバビリティを大事にしたい。そんなせめぎ合いがあった結果このブレーキタッチに決まったそうで、開発主査は「こだわりのブレーキタッチです」と太鼓判を押してくれました。
こういったドライバビリティのよさは、走りの気持ちよさにつながります。まさに「日常に走りの楽しさを」のコンセプトどおり。スイフトらしさを一番感じられる部分でしょう。
■Z世代の若者にこそオススメしたい
乗り心地にも、先代からの進化が感じられました。スポーティさを少々控えめにし、コシがあるなかでも乗り心地がよく疲労感の少ない乗り心地です。これはフロントシートの方が感じやすく、逆にリアでは少し跳ね気味にも感じられました。進化したADAS(先進運転支援システム)のレーンキープアシストが、ガッチリとセンターキープするものへと変わったことも加え、ロングドライブがとても楽なクルマになったと印象付ける乗り心地でした。
このあらゆるものというものが値上がりし続ける時代に、172.7~233.2万円という求めやすい価格帯に抑えられたプライスタグは、驚きを通り越え感動すら覚えます。そのくらい、クルマの出来がいいのです。コスパの高さゆえ、本当にこの価格で提供しちゃって大丈夫? と心配になってしまうほどクオリティの高い新型スイフト。ユーザーターゲット層はどのあたりを想定したのでしょう。
先代までのスイフトは、ユーザーの平均年齢層が約44歳でした。これでも他社のコンパクトカーに比べれば10歳くらい若いそうですが、開発陣はこの5代目スイフトを、Z世代の若者にも積極的に選んでほしいクルマに仕上げたと語っています。
なにより運転がしやすく、自分の意のままに動き、ロングドライブも楽チン。そして、モダンで洗練されたデザイン。燃費のよさや求めやすい価格帯もプラスになるでしょう。誰もが運転しやすく、誰もが運転を楽しく感じられる、初めてのマイカーに最適な1台に仕上がっていました。これからクルマを持とうとしている世代にも、文句なしでオススメできる1台です。
最後に気になるホットグレード「スイフトスポーツ」の次期型ですが、開発陣は何も語ってはくれず……。やはりギリギリまで明らかにされない、トップシークレットのようです。しかし、出ませんと否定する人は1人もいなかったことから、開発はかなり進んでいるのではと予想されます。果たして、噂どおりマイルドハイブリッド化されるのでしょうか。こちらの続報も楽しみに待ちたいです。
<文&写真=青山朋弘>