中古車の価格とはつねに変動するもの。それはほとんどの場合、需要と供給のバランスによって決められています。しかし、ごくまれに需要と供給以外の要素が絡んでくることも……。今回は、ここ最近話題になっている円安の影響について解説していきます。2022年から続く長い円安相場は、中古車市場にどんな影響があったのでしょう？

■円安で得するのは輸入ではなく輸出

人気の有無と、市場に出まわっている台数のバランスによって決定される中古車の価格。これに、最近では為替の影響が出始めています。ご存知、日本人の生活を徐々に苦しめ始めている「円安」です。

22年3月ごろから始まった円安の影響は、最近急激に増加している海外からの旅行者数を見ても伺い知ることができます。それまで1ドル＝115円程度で推移していた為替レートが、今では1ドル＝150～160円で取引されるようになりました。彼らが日本を旅行先へ選んでいる理由の多くは、旅費の安さと買い物の安さということは簡単に予想できるでしょう。

日本の物価の安さは、いまや世界中で有名。Apple社のスマートフォン「iPhone」の新型が出るたびに、日本が世界一安く買えると話題になることも最近では風物詩のようになりました。そしてこの物価の安さは、特に海外への輸出を生業としている中古車販売業の人たちにとっても大きなプラスになっているのです。

例えば、100万円の日本車をドルで仕入れる場合を考えると、1ドル＝100円のときには単純に1万ドル必要となりますが、1ドル＝150円になると6700ドルほどで済むこととなります。仮に輸出先での販売価格を変えないとするならば、仕入れが安く済む円安時のほうが利益率が大幅に上昇します。

セルカでは海外への輸出業を行っている会社もオークションに参加していますので、為替の変動によってオークションでの落札価格も上下動します。ここからは、この1年ほどで落札価格が上昇している買取例を2件紹介します。買取価格の上がり幅に注目してみましょう。

■トヨタ RAV4の場合

まず1台目は、トヨタの人気ミドルSUV「RAV4」です。23年6月の落札分と、24年3月落札分で比較しました。なお、グレードや走行距離、装備など、条件はなるべく近くしています。

23年6月落札
RAV4 アドベンチャー オフロードパッケージ
21年式　　2万2000km
落札価格＝288.5万円

24年3月落札
RAV4 アドベンチャー オフロードパッケージ
21年式　　2万4000km
落札価格＝296.8万円

アティチュードブラックマイカというボディカラーの両者ですが、条件がほぼ同じでも1年違うだけで約8.3万円の差額が出ています。

■ホンダ ヴェゼルの場合

2台目は、ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」です。23年4月の落札分と、24年3月落札分で比較しました。なお、グレードや走行距離、装備など、条件はなるべく近くしています。

23年4月落札
ヴェゼル　X ホンダセンシング
21年式　　6万2000km
落札価格＝105.2万円

24年3月落札
ヴェゼル　X ホンダセンシング
17年式　　6万2000km
落札価格＝123.7万円

前者がホワイト、後者がブラックとボディ色が違いますが、両色ともにリセールでは人気の高い色。こちらも条件が近い個体同士で、約18.5万円の差額が出ています。

■注目は輸出業バイヤーが参加しているか

24年に入ってから買取契約した例を2件あげましたが、このほかのクルマでも全体的に23年以前より相場が上昇しているのは紛れも無い事実です。決してすべてのクルマに当てはまるわけではないものの、円安が続いている現在は以前よりも高額買取が期待できます。この先いつまで円安傾向が続くかは不明ですので、買取をお考えの方は今がチャンスかもしれません。

先述の通り、セルカでは輸出業のバイヤーも多くオークションに参加しています。自分の所有車がグローバル市場で人気のある車種かどうかは、なかなかわかるものではありません。昨今では輸出向けの高額買取が続出している状況ですので、クルマ売却をお考えの方は一度セルカで買取オークションを利用してみてはいかがでしょうか。思いもよらない買取額が見られるかもしれません。

＜文＝青山朋弘　写真＝セルカ＞