「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」ランドクルーザーをこう表現したのは、その顧客でした。世界中で愛されている、日本を代表するオフローダー。1951年の初代BJ型登場以来世界中で支持されているのは、このフィロソフィーをもとに作り続けられたからにほかなりません。
ランドクルーザーは1951年に登場し、トヨタを代表するクルマとして世界中で販売されてきました。唯一無二ともいえる悪路走破性と信頼性は70年以上の歴史の中で培われ、今も世界中の多くのユーザーに愛されているモデルです。2023年8月の発表では、日本にも3種のランドクルーザーがラインナップされることが決定。21年登場のランドクルーザー300を筆頭に、ランドクルーザー70、ランドクルーザー250と順に市場へ投入されていきます。
一方で近年では、世界一過酷なラリーとして名高い「ダカール・ラリー」へ市販車改造クラスで出場し、現在クラス優勝を11連覇中。300と250の開発には、ランドクルーザーで参戦する三浦 昂ドライバーもテストドライバーとして携わっていて、ダカールの長いステージでも壊れないタフさや、疲れの少ない車両セッティングなどのノウハウが生かされています。
今回は、もうすぐすべてが出揃う最新ランドクルーザーラインナップの3台を紹介します。すでに登場している2種は、早くも入手困難となるほど大人気を博していますが、この兆候はこの先も続くのでしょうか? そのあたりの予想も含め詳しく解説していきます。
■ランドクルーザー300
現行の300は、2021年に登場しました。07年に発売された200シリーズの後継となるステーションワゴン型の本格4WD車であり、ランドクルーザーシリーズのフラッグシップモデルです。クロスカントリー車ともいわれるオフロード4WDの特徴としてラダーフレーム構造のシャシーが挙げられますが、300も歴代モデルと同様にラダーフレームを継承しています。
トヨタの新しいプラットフォーム理論であるTNGAに基づいて新開発されたGA-Fプラットフォームは、ラダーフレームの構造からすべてを新設計しました。軽量・高剛性化はもちろんのこと、低重心化や重量配分、サスペンションの構造やジオメトリーなどが最適化され、オンロード・オフロードどちらでも、世界中どんな道でも、運転しやすく疲れにくいクルマを目指して開発されました。
パワートレインには、3.5Lガソリンと3.3Lディーゼルの2種類の新開発V6ツインターボエンジンを用意。これに新開発の10速ATを組み合わせています。ガソリン車は415ps/650Nmを、ディーゼル車は309ps/700Nmをそれぞれ発生させ、悪路をものともせず走破できる動力性能を生み出しています。
21年8月に発売以来、世界中から注文が殺到した300。海外向けの台数がだいぶ捌けてきて国内向け納車がようやく増えてきてはいるものの、24年3月現在でも新規オーダーは停止されたままです。日本で一番納期がかかる新車となってしまったのと同時に、中古車市場での価格も高騰化。今ではすっかり手に入りにくいクルマとなってしまいました。今後は改善される方向ではあるものの、具体的なスケジュールはまだ未定となっています。
車両価格:510.0~800.0万円(24年3月現在)
■ランドクルーザー70
3つに派生したランドクルーザーシリーズのなかでは、一番荒い使われ方にも耐えうるタフさを備えた、ヘビーデューティ型。業務用途や過酷な環境での使用を前提とした、「信頼性・耐久性・悪路走破性」の3つの性能が一番追求されたモデルが70です。路面や気温、気候などどんなに環境が過酷でも、そこで暮らしている人々の要望に応え地域の社会を支え続ける存在となるのが70に与えられている使命。世界中で、今でも走り続けている4WD車です。
現行モデルは、現代の仕様にアップデートが施され23年11月に再販されました。そもそも70系は、24年というロングセラーを誇った元祖ヘビーデューティの40系(1960年発売)を祖先にもつクルマ。84年にデビューし04年まで生産されていましたが、排ガス(NOx)規制により一度国内販売を終了しています。その後70系の発売30周年を記念し、14年に期間限定生産で復活。現行モデルは、そこから8年ぶりに再びカタログモデルとしてラインナップされました。
強靭なラダーフレーム構造と高い悪路走破性、そしてシンプルなパーツ構成という特徴はそのままに、現行70は多くの箇所が現代化されました。まずエンジンには2.8Lの直4ディーゼルターボを採用。悪路をものともしない204ps/500Nmのパワフルな性能が与えられています。
そして、伝統のラダーフレーム構造を継承しながらも、オンロード・オフロード問わず快適に走行できる操縦安定性を実現するため、電子制御による車両制御システムが新たに導入されました。駆動や制動を制御する、ビークルスタビリティコントロール、アクティブ・トラクションコントロール、ヒルスタートアシストコントロール、ダウンヒルアシストコントロールなどを採用し、乗り心地向上のためサスペンションも改良されています。
モノグレード展開で、480万円の価格設定。決して安くはないものの、アウトドアブームの今、最高に使えるギアになりそうな70が人気が出ないわけがありません。通常の販売方法では供給数が圧倒的に足りませんので、あらかじめ地域で決められている割り当て台数を各販売店で抽選販売としている場合が多いようです。もうすでに初回生産分は販売終了となっているようで、気になる納期は1~3年ともいわれています。この先はいつ販売が再開されるのか、まだ正式なアナウンスはありません。
車両価格:480.0万円(24年3月現在)
■ランドクルーザー250
ヘビーデューティ型の70に対し、ライトデューティ型の新型としてお披露目されたのが、24年発売予定の250。先代まではプラドの名で販売されていたモデルの後継車です。24年3月現在ではまだ販売価格などが明らかにされていない発売前の状況ですが、23年8月に世界初公開された時点で明らかにされた情報をお伝えします。
ライトデューティ型は70系から派生車種として登場したシリーズで、1985年に登場したランドクルーザーワゴンがルーツです。その後90年にはプラドが登場し、世代を追うごとに高級化にシフトする傾向にありました。しかし250は、こうした背景を払拭するべく高級化路線をやめ、本来のランクルが求められていた、人々の生活と実用を支えるという本質に原点回帰することを狙って開発されました。
まずシャシーには、300でも使用されているGA-Fプラットフォームが採用され、オンロード・オフロード両方での走行性能を向上させました。ランクル初の電動パワステも快適性の向上にひと役買います。パワートレインには、300のエンジンではなく70の2.8Lディーゼルターボが搭載され、ランクルでは初めての採用となるハイブリッドパワートレインも用意されています(日本導入は不明)。
ADAS(先進運転支援システム)も充実させています。最新のトヨタセーフティセンスを全車に採用。クラストップレベルの安全性能を手に入れています。懸念されるのは、GA-Fプラットフォームによってひと回り大きくなったボディです。従来のプラドよりも大きくなりますので、これまでのプラドユーザーがこのサイズを許容できるかが問題になることもあるでしょう。
そして1番の問題点は、やはり購入できるかどうかという点です。250もほかのランクルシリーズと同様、人気モデルになることはほぼ確定です。となると、たとえ販売方法をどのように変えても購入できない人が出てきます。納車も長期化するでしょう。こういった人気の集中による納期遅延は対策が難しいので、トヨタ側もなかなか対応できないかもしれません。これにユーザーがどこまで付き合えるか。この点は大きな問題になるでしょう。
<文=青山朋弘 写真=トヨタ>