リセールの良いクルマとひと言でいっても、いろいろな種類があります。需要が供給数を上まわるというのは大前提にあるのですが、世の中には予想もできないような買取値がつくクルマも存在するのです。そんな世界をちょっとでも見てみたいと思うのが、クルマ好きのサガ。実際にどのくらいの残価率で取引されているかは気になる人も多いのではないでしょうか。
今回紹介する5台も、過去SellCaで実際に買取が行われた高額車両。その希少価値の高さや慢性的な供給数不足から、価格が高騰しているホンダのクルマにスポットを当てました。このクルマたちがなぜ高価買取されたのか、実際に買取されるリアルをご覧ください。
ここに紹介しますデータは、愛車買取オークションSellCaでの出品データからホンダ車に対象を絞り、特に高額売却された実績について調査したものです。
調査機関:自社調査
調査日:2018年05月04日~2023年06月30日
調査対象:弊社で取引されたクルマのデータ898件(ホンダ車に絞って)
調査方法:自社保有データ分析 高額で落札されたものを上から5つ抽出(車種が同じもの、乗用車でないものは除く)
●ヴェゼル
最初に紹介するのは、大人気のコンパクトクロスオーバーSUV、ヴェゼルです。
この個体は
グレード:e:HEV Z
年式:2021年
走行距離:21,070km
というデータでした。新車当時の価格は289万円(オプション等除く)から。SellCaで実際に落札された価格は、なんと312万円です。
ホンダのラインナップでも特に人気の高い、コンパクトSUVのヴェゼル。この2代目は発売当初から大幅なバックオーダーを抱えるほど爆発的な人気を博したモデルで、登場から2年以上経った23年9月現在でも新車は半年以上の納期がかかるほどです。
この個体はハイブリッド車というだけでなく、販売構成比で40%を超える一番人気グレードの「e:HEV Z」である点や、パールホワイトのボディカラー、3万km未満の低走行車という点もプラス評価の要因となっています。そして、前述の納期問題も外せないポイントでしょう。今でも新車で買えるクルマが販売価格よりも高い金額で買取できるのは、需要が供給を圧倒的に上まわっている証拠です。発売から2年以上過ぎてもいまだに納車の長期化が解消しないと、中古車市場の価格もなかなか下がりません。そこが2代目ヴェゼルの高価買取につながっていると考えられます。
(成約時期:2022年11月)
●オデッセイ
次にご紹介するのは、最上級ミニバンのオデッセイです。
こちらの個体は、
グレード:ハイブリッド アブソルート EX ホンダセンシング
年式:2018年
走行距離:44,378km
というデータとなっております。新車当時の価格は415万円(オプション等除く)でしたが、SellCaで実際に落札された価格は、なんと340万円です。
ミニバンやSUVは、セダンやハッチバックに比べリセールが高いことが一般的ではありますが、このオデッセイのように異常な価値がつくときが稀にあります。4年落ち、走行距離約4.5万kmで残価8割超えは、まるでスーパーカーのような残価率です。これには大きな理由がありました。
この文章の直後に成約時期が記載してありますが、それが鍵となっています。現行5代目オデッセイは一度生産を終了しましたが、2023年4月に同年冬から再販売を開始するとアナウンスされた経緯があります。この生産終了の発表が、21年の4月。同年12月には日本国内での生産が終了となり、翌22年の9月に国内在庫すべてが完売しました。この個体の成約時期は偶然にもこの完売ニュースリリースの1ヶ月後であり、もう新車で買えなくなったオデッセイの需要が急上昇していた時期でもあります。
のちに再販売が決まったことからもわかるように、オデッセイには需要も人気もあり、さらに市場価格が上がってきているベストなタイミングだったというのが、高価買取になった特殊な理由です。もちろんハイブリッドの最上級グレードということもプラスに働いてはいますが、タイミングのよさが一番の原因ともいえる珍しい例です。
(成約時期:2022年10月)
●シビック
次に紹介するのは、FF車世界最速の称号を持つピュアスポーツカー、シビック タイプRです。
こちらの個体は、
グレード:タイプR
年式:2020年
走行距離:335km
というデータ。シビック タイプRの当時の新車価格は475万円(オプション等除く)でした。SellCaで実際に落札された価格は、なんと560万円です。
評価点6という、中古車では珍しい点数が付けられているところからも、状態のよさが伺える先代のシビック タイプR。評価点ももちろん要因の一つではありますが、335kmという走行距離の少なさが定価以上の高額買取を実現した一番大きな理由であることは明確です。走りをウリにしている高性能車では、ここまで新車に近いコンディションで市場に出てくること自体がレアケース。需要はいくらでもありますので、高値で売買されることにも納得です。
加えて、2022年9月に発売した現行タイプRの納期遅れも影響しているでしょう。新車ではあまりに注文が殺到し過ぎて、23年9月現在でもオーダーストップ中。すぐに購入できるのは中古車だけという状況も、買取価格の高騰化につながっています。
(成約時期:2021年12月)
●S2000
次に紹介するのは、オープンボディのFRピュアスポーツカー、S2000です。
こちらの個体は、
グレード:‐
年式:2009年
走行距離:9,334km
というデータになっています。当時の新車価格は386.4万円(オプション等除く)からでした。SellCaで実際に落札された価格は、なんと656万円です。
ホンダの創立50周年を記念して開発され、専用設計のシャシーと専用エンジンを使った贅沢な作りのハイパフォーマンスロードスターがS2000です。近年の国産スポーツカー高騰の波はこのS2000にも影響があり、中古車市場での価格は上昇する一方。特にこの個体と同じ型式AP2と記載される、2.2Lエンジン搭載の後期型は人気が高くなっています。
この個体に関しては、1万km未満という走行距離が高価買取の一番の理由です。さらに年式を見ると2009年式となっていますが、この年にS2000は生産終了しています。本当に最後の最終型という希少性もプラス要素といえるでしょう。評価点4.5が付いているように内外装のコンディションは良好で、ほぼフルノーマルという点も高評価の一因です。そして、こちらも希少性の高いオプションのブラウンレザーシートもプラス要因となっています。
(成約時期:2022年1月)
●NSX
最後に紹介するのは、ホンダが世界に誇るミッドシップピュアスポーツ、NSXです。
この個体は、
グレード:-
年式:1991年
走行距離:201,542km
というデータです。NSXの当時の新車価格は800万円(オプション等除く)でした。SellCaで実際に落札された価格は、なんと670万円です。
初代NSXは、スカイラインGT-Rと並び世界の名だたるスーパースポーツとしのぎを削った、数少ない国産ハイパフォーマンスカー。オールアルミ製ボディモノコックに、NA(自然吸気)ながら280psを発揮した3.0LのVTECエンジンをミッドに搭載し、1990年に発売されました。F1ドライバーのアイルトン・セナが開発に携わっていることも有名で、歴史に残る名車といえる存在でしょう。
この個体は平成3年登録のMT車で、走行は20万kmオーバー。改造も多数あるのですが、31年前のクルマとは思えないほどの売却額となりました。この理由は大きく分けて2つあり、ひとつは国産スポーツカーの世界的な人気によるもの。もうひとつはNSX独自のリフレッシュプランの存在です。NSXにはホンダ自身が手がけるレストアサービスがあり、そこで新車状態にまで整備して戻してもらえます。改造車でも入庫ができるメーカー認定のサービスですが、なかなか他社の中古車では見られません。こういった貴重な存在も、数少ない現存車の価値を上げる要因のひとつだといえるでしょう。
(成約時期:2022年9月)
<文=青山朋弘 写真=ホンダ/SellCa>